セピア‐ため息の行方
  すると啓太は腕時計をそっと見て
「いや良いです。もう既に8時近いですし、胡桃さんも今夜は疲れているでしょうから早めにシャワーでも浴びてお休みになって下さい」
  と言った。


「そうね。じゃ私そうする事にするわ。今日はわざわざ送って頂いてありがとうございます。ではまた明日病室に顔を出す事にしますので宜しくです。お母様にもそう伝えて下さいね。ではおやすみなさい」
  と胡桃が言うと


「はい。ではそうして下さい。母にも伝えておきます。僕、明日はバイトがあるので、仕事が終わり次第病室に伺う事にします。それでは戸締りをして今日はゆっくりとお休みになって下さい。では失礼します」
  と言って啓太が深々と頭を下げお辞儀をしたので、胡桃は啓太を見送り部屋の中に入るとドアをそっと閉めた。


  部屋はオートロック式でホテルの鍵をキイホルダー部分の穴に差し込むと明りが点くようになっている。だから胡桃は即、鍵をキイホルダー部分の穴に差し込んだ。すると部屋の中のやや暗めの明りがいっせいに点くと面白い事にテレビまでついた。


  尚、胡桃は早速部屋の窓を全開にして、外の新鮮な空気を取り込んだ。ちなみに外の空気は真冬の空気なのでヒンヤリした。


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