セピア‐ため息の行方
  だから当然ながら花梨は父方の曾おばあちゃんのように李さんと話をした事がない。せめて一度で良いからお話をしてみたかったなあーと花梨はとても残念に思う。ない物ねだりなのは解っている。が、しかし手に入れられないと思えば思う程に尚更募る思い。


『諸行無常かあー。なんかこの言葉がたまらなく身に沁みるなあー。この世のすべては儚い。私の心は今そんな気分。でもどうしちゃったんだろう?このどうしようもない心の中の不安感……』


  昨夜も花梨はそんな事を考えては一人鬱鬱(うつうつ)としてとうとう朝方まで眠れなかった。おかげでこのところ目の下にはうっすらと隈(くま)が出来ている。この頃の私ってホントに変。このまま私ずっとこんな気持ちでいるなんてイヤだなと花梨は思った。


  思えば最近は仕事ばっかりで忙しい毎日を送っていたから、多分心の中がちょっぴり疲れているのかも知れない。
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