Rain
教室の近くに来ると、いつものごとく、教室の外まで彩の笑い声や喋り声が聞こえてくる
私は、そんな教室のドアを勢いよく開けて、中に入っていった
クラスの皆は、その音に驚いたみたいで、一瞬、こちらを見て静まり返った
でも、そんな皆の反応を後目に、私は、教室の後ろの席にたむろしている愛実達の方へ行って、彩を見据えながら、強く言った
「…彩………前に坂田さんの傘、盗ったよね?あれ返してあげて」
それを聞いた彩も負けじと言い返してくる
「はぁ!?証拠でもあんの!?つーか彩があんなキモいやつの傘盗るわけねーだろが!」
その時ちょうど、私を追い掛けて教室に着いた坂田さんは、驚いてそのやり取りを見ていた
今にも掴みかからんばかりの勢いで詰め寄ってくる彩に対して、私は冷静に返した
「…坂田さんの傘を盗ったのは、それが坂田さんの傘だって知らなかったのと、それが高いブランドの傘だったから……」
「はぁ!?テメエざけんじゃねーぞ!第一、テメエだってあの時……」
サヤカは、そう言いかけた彩の肩を強くひいて止めた
そして、いつものように冷静に笑いながら言った
「さっきから聞いてたらさぁ……何?彩が傘を盗ったって証拠でもあんの?」
「……私がこの目で見た……」
私が、今度はサヤカを睨みながら言うと、サヤカは更に勝ち誇った笑みを浮かべて言った
「…へぇー、その目でねー……で、その目は本当に信用出来るの?
あんた最近、マナと気まずくなってるからってわざと彩の事、陥れようとしてんじゃないの?」
「そんな卑怯な真似しない!」
「第一、あんた言ってる事おかしいと思わない?
もし、あんたが、彩が傘を盗ってるのを見たってなら、何で、その時に止めなかった訳?
それをこんな今更になって蒸し返してきてさ。
そんな、あんたの言い分信じろって方が普通に無理でしょ」
サヤカがそう言い終わるとクラス中の視線が私に向いた
私は、少し沈黙した後、意を決して口を開いた
「…その時、すぐに止めなかったのは……
…その時は私も誰かの傘を盗ったから……
…あの時は正直、深く考えてなかった……
…雨が降ってたし……皆、盗ってたし…
…そこで止めて空気悪くなるのも嫌だったし…
…私が盗った傘は普通のビニール傘だったし、どこにでもある安い傘だから、別に良いやって……
……でも違う!彩が盗った傘だって、何万本も生産されているうちの1本だったかもしれない……
でも坂田さんにとっては違うの!
お母さんがくれた、たった1本の大切な傘なの!
私が盗った傘だって、そうだったかもしれない……
…私から見たら、どこにでも売ってる普通のビニール傘って感じだったけど……持ち主からしたら違うかもしれない!
大切な何物にも変えがたい傘だったかもしれない……
その物を大切にしてる人にとって、ブランドだとか、値段だとか、そんな物、関係ない……
……だからお願い……坂田さんの傘を返して………私も返すから………」
すがるように、そう言った私に対して、彩はさっきより更に感情的になって怒鳴り付けるように言った
「はぁ!?んなもん知らねーよ!つーかテメエ、マジでウゼーんだよ!」
そう言ったとほぼ同時に彩の平手が私の左頬を捕らえた
頬に激痛が走って、私は思い切り倒れこむ
クラスの中からは一斉に悲鳴が上がった
その悲鳴を聞いて、やっと皆が見ている事に気が付いた彩は、クラス全員を睨み付けながら怒鳴った
「テメーら見てんじゃねーよ!ぶっ殺されてーのか!?あ゛ぁ!?」
その声を聞いて、皆、目をそらしたり、そそくさと席に戻る者もいた
私は、そんな彩に更に強く言った
「…傘を返して……!」
「だから、知らねーつってんだろ!」
そんな私を、彩は更に怒鳴りながら殴り付ける
そのうち私の口の端は切れて、血が出始めた
それでも尚、食い下がって諦めようとしない私を見て、坂田さんが慌てて、止めに入ってくる
「…本條さん!もう良いよ!もう充分!井上さんも知らないって言ってるし、ありがとう!取り返そうとしてくれて」
「…でも……」
そんな私達のやり取りを見て、サヤカがバカにしたような笑いを浮かべながら言った
「ほら、お前いらないってよ。余計な事すんなって」
「私はそんな事!」
「…あ゛ぁ?」
慌ててフォローに入ろうとした坂田さんを睨み付けて、続ける
「だから、誰もお前の事なんて必要としてねーんだよ。
お前が存在してるだけで皆が迷惑すんの。
だから消えろよ」
そう言い、愛実や彩と共に笑い合うサヤカを見ながら、私は溢れそうになる涙を必死に堪えていた
私は、そんな教室のドアを勢いよく開けて、中に入っていった
クラスの皆は、その音に驚いたみたいで、一瞬、こちらを見て静まり返った
でも、そんな皆の反応を後目に、私は、教室の後ろの席にたむろしている愛実達の方へ行って、彩を見据えながら、強く言った
「…彩………前に坂田さんの傘、盗ったよね?あれ返してあげて」
それを聞いた彩も負けじと言い返してくる
「はぁ!?証拠でもあんの!?つーか彩があんなキモいやつの傘盗るわけねーだろが!」
その時ちょうど、私を追い掛けて教室に着いた坂田さんは、驚いてそのやり取りを見ていた
今にも掴みかからんばかりの勢いで詰め寄ってくる彩に対して、私は冷静に返した
「…坂田さんの傘を盗ったのは、それが坂田さんの傘だって知らなかったのと、それが高いブランドの傘だったから……」
「はぁ!?テメエざけんじゃねーぞ!第一、テメエだってあの時……」
サヤカは、そう言いかけた彩の肩を強くひいて止めた
そして、いつものように冷静に笑いながら言った
「さっきから聞いてたらさぁ……何?彩が傘を盗ったって証拠でもあんの?」
「……私がこの目で見た……」
私が、今度はサヤカを睨みながら言うと、サヤカは更に勝ち誇った笑みを浮かべて言った
「…へぇー、その目でねー……で、その目は本当に信用出来るの?
あんた最近、マナと気まずくなってるからってわざと彩の事、陥れようとしてんじゃないの?」
「そんな卑怯な真似しない!」
「第一、あんた言ってる事おかしいと思わない?
もし、あんたが、彩が傘を盗ってるのを見たってなら、何で、その時に止めなかった訳?
それをこんな今更になって蒸し返してきてさ。
そんな、あんたの言い分信じろって方が普通に無理でしょ」
サヤカがそう言い終わるとクラス中の視線が私に向いた
私は、少し沈黙した後、意を決して口を開いた
「…その時、すぐに止めなかったのは……
…その時は私も誰かの傘を盗ったから……
…あの時は正直、深く考えてなかった……
…雨が降ってたし……皆、盗ってたし…
…そこで止めて空気悪くなるのも嫌だったし…
…私が盗った傘は普通のビニール傘だったし、どこにでもある安い傘だから、別に良いやって……
……でも違う!彩が盗った傘だって、何万本も生産されているうちの1本だったかもしれない……
でも坂田さんにとっては違うの!
お母さんがくれた、たった1本の大切な傘なの!
私が盗った傘だって、そうだったかもしれない……
…私から見たら、どこにでも売ってる普通のビニール傘って感じだったけど……持ち主からしたら違うかもしれない!
大切な何物にも変えがたい傘だったかもしれない……
その物を大切にしてる人にとって、ブランドだとか、値段だとか、そんな物、関係ない……
……だからお願い……坂田さんの傘を返して………私も返すから………」
すがるように、そう言った私に対して、彩はさっきより更に感情的になって怒鳴り付けるように言った
「はぁ!?んなもん知らねーよ!つーかテメエ、マジでウゼーんだよ!」
そう言ったとほぼ同時に彩の平手が私の左頬を捕らえた
頬に激痛が走って、私は思い切り倒れこむ
クラスの中からは一斉に悲鳴が上がった
その悲鳴を聞いて、やっと皆が見ている事に気が付いた彩は、クラス全員を睨み付けながら怒鳴った
「テメーら見てんじゃねーよ!ぶっ殺されてーのか!?あ゛ぁ!?」
その声を聞いて、皆、目をそらしたり、そそくさと席に戻る者もいた
私は、そんな彩に更に強く言った
「…傘を返して……!」
「だから、知らねーつってんだろ!」
そんな私を、彩は更に怒鳴りながら殴り付ける
そのうち私の口の端は切れて、血が出始めた
それでも尚、食い下がって諦めようとしない私を見て、坂田さんが慌てて、止めに入ってくる
「…本條さん!もう良いよ!もう充分!井上さんも知らないって言ってるし、ありがとう!取り返そうとしてくれて」
「…でも……」
そんな私達のやり取りを見て、サヤカがバカにしたような笑いを浮かべながら言った
「ほら、お前いらないってよ。余計な事すんなって」
「私はそんな事!」
「…あ゛ぁ?」
慌ててフォローに入ろうとした坂田さんを睨み付けて、続ける
「だから、誰もお前の事なんて必要としてねーんだよ。
お前が存在してるだけで皆が迷惑すんの。
だから消えろよ」
そう言い、愛実や彩と共に笑い合うサヤカを見ながら、私は溢れそうになる涙を必死に堪えていた