オフィス・ラブ #∞【SS集】
正面の人の視線が怖いので、先に取って渡すと、受けとる手に光る指輪が見える。

へえ。


新庄さんに目をやると、ほおづえをついた彼と目が合った。

少し眉を上げると、ふっと煙を吐いて、俺の手元を顎で指す。



「手、放せ」



言われて、指輪を見ようとして、大塚さんの指先を持っていたことに気がついた。

いいじゃんこのくらい、と思いながらも、恐ろしいので従順に放す。


大塚さんはそのことよりも、指輪に気づかれたことのほうが恥ずかしいらしく、照れたように笑った。

なんだ、やることやってんじゃん。

月並みだけど、雨降って地固まったのかな。



「そういえば、おふたりって、オープンにしたんですか。僕、6部の何人かに言われたんですけど」



高木さんたちが俺を見るなり、ねえねえ聞いて、と寄ってきたから、何かと思った。

すると大塚さんは頬を染めてうつむき、新庄さんはそれを見てにやりと笑う。



「してない。大塚が、やらかしただけだ」

「ひどい、そんな言いかた」



反省してるって、言ったでしょう。

そう言いつのる大塚さんは、やけに可愛い。


なんでも、ブーケを受けとめた彼女が、まっしぐらに新庄さんのもとへ飛んでったとかで。



「恵利の話? 微笑ましかったねえ、あれ」



そこへドリンクをトレイに乗せて、石本さんが戻ってきた。

トレイをテーブルに置くと、再びソファの端に座る。



「なんでまた、そんなことしたんですか」

「わからないの、気がついたら」



ドリンクを各人に配りながら、大塚さんが不本意そうに眉を寄せた。

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