オフィス・ラブ #∞【SS集】
お兄ちゃんのTシャツに、はい、と何かをくっつける。


すごい、クワガタだ。

お兄ちゃんも、歓声を上げた。



「すげえ、どこにいたの」

「間抜けな子らしくて、あっちの網戸にとまってた」



家の明かりに誘われたんだろう。

私たちは、家の周りにあまりこういう自然がないから、じいじの家や、この別荘で遊ぶのが、毎年ものすごく楽しみだ。

凛ちゃんママが、面白そうにクワガタをつつきながら言う。



「観察して、自由研究にしちゃえば」

「そうだ、私も花の絵、描かなきゃ」

「母さんにだけは、手伝わせるなよ」



からかうお父さんに、ひどい、とお母さんがふくれる。

大丈夫、絶対手伝ってもらわないから。



「作文なら、手伝えます」

「それこそ、由宇なんて、誰の助けもいらないだろ」

「また賞とったんでしょ? すごいね、恵利の血かなあ」

「ライターとして、うちの会社に入るといい」

「新庄の親バカって、妙に現実的だよね…」



そう、私は作文が得意。

本を読むのが大好きで、同じく本好きの凛ちゃんママと、いろんな本を貸し借りしてる。

なんちゃら省のなんちゃら賞とか、もう数えきれないくらいもらってる。

でもね、別にこれで食べていこうとか、そんなことは思ってない。

なんとなくだけど、私には夢がある。


「会社」に入ること。

< 127 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop