オフィス・ラブ #∞【SS集】
お父さんを見てても、凛ちゃんパパを見てても、豊お兄ちゃんを見てても、お母さんたちの話を聞いてても。

会社ほど、面白くて、スリルがあって、素敵な仲間がいて、感動できる場所って、ないんじゃないのって思うんだ。

でもこれを言うと、夢がないって、友達なんかは言うんだよね。


なんで?

みんなのお父さん、かっこよくないの?



いつの間にか、テーブルの上のものはあらかた食べ終えていて、三々五々、私たちは好きなことを始めた。

私は出しっぱなしだった未調理の食材を片づけようと、グリルのほうへ行った。


すると、お父さんと凛ちゃんパパが、庭の先のほうへ話しながら歩いていくのが見えた。

煙草を吸いにいったんだ。


ライターの炎に続いて、くわえてる煙草の先が、赤く光るのが見える。

向こうが風下だから、煙は来ないけど、少しだけ香ってくる、お父さんの匂い。


こういう時は、お母さんたちも、絶対に近づかない。

男同士の時間、らしい。


何、話してるんだろうなあ。

仕事の話か、案外くだらない昔話とかなんじゃないかなって気もする。



いつの間にか鳴きだしていた、リーリーという虫の声を聞きながら。

野菜を、あるていど小分けにしてラップに包もうとしていると、凛ちゃんが手伝いに来てくれた。



「あたし、由宇ちゃんに感想文書いてもらおっかなあ」

「クッキーつくってくれたら、いいよ」

「マジで、段ボールいっぱいつくるよ」



本気で言っているっぽい凛ちゃんに笑う。

凛ちゃんは国語が苦手で、だけどママの影響で、お菓子づくりがものすごく上手なのだ。

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