オフィス・ラブ #∞【SS集】
「帰っちゃうの?」
「ちゃうの、って何よ」
食後、貸していた部屋着から、さっさと自分の服に着替えはじめた彼女に、ついそんな声が出た。
「もう一度したら思い出せるかなって、思ってたんだけど」
「…それは、誘ってるの?」
脱いだTシャツで胸元を隠しながら、彼女が不思議なものでも見るような目つきでにらんでくる。
誘うというか、そういう流れなんだと思っていた、勝手に。
「また会うには、どうしたらいいかな」
これで最後になるのは、なんだか残念だなと思って、正直にそう言うと。
チェストの上に置いておいた大森の携帯を彼女がとりあげて、いくつかキーを操作して、はいと渡してくる。
「これ、私の番号」
「名前教えてくれないと、登録できないよ」
「教えたわよ。思い出すまで、ゆうべのバーの名前でも入れとけば」
それじゃあ、バーそのものの電話番号と紛らわしいじゃないか。
着替えるからあっちいって、と寝室を追い出された大森は、携帯を眺めながらうーんと迷った。
7月に会ったから「7月」と入れようとしたけれど、頭が数字だと検索しづらそうなことに気がついて。
「七月」と漢字で入れ直してみて、また少し考えたあげく。
そう読めなくもないので、「なつき」と登録することにした。