オフィス・ラブ #∞【SS集】

「ずいぶん喉が渇いてたんだな」

「いつから外にいたんでしょう」



ていうか、これからどうしよう。

ひとりでここまで来たんなら、いいんだけど。

なんだかちょっと危なっかしくもあり、かといって警察に届けるような大事でもない気がして、思案する。



「まあ、急ぐわけでもないし」



少し、こうしてようぜ、と新庄さんが、エアコンを調節する。

女の子は片手に水を持ったまま、運転席にしがみついて、それを眺めはじめた。



「なつかれましたね」

「自慢じゃないが俺は、子供受け悪いんだけどな」



それは、受けようとしていないからだろう。

実際それなりにふるまえば、こういう裏表のないタイプの魅力は、子供にも伝わるはずだ。



「こっち来たら?」



新庄さんを指して女の子に言うと、ぱっと顔を輝かせて身軽にコンソールを乗り越え、驚愕している新庄さんのひざにひょいと乗った。

やっぱり。



「この子のおうち、同じ車種なんじゃないでしょうか」

「確かに、移動し慣れてるな…」



そう言う新庄さんは、たぶん女の子の懐っこさに驚いたんだろう。

行き場をなくした腕を窓の縁にかけて、女の子の頭越しに、困ったように笑って私を見た。

でもけっこう、見た感じは、しっくりきている。

< 77 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop