オフィス・ラブ #∞【SS集】
「ずいぶん喉が渇いてたんだな」
「いつから外にいたんでしょう」
ていうか、これからどうしよう。
ひとりでここまで来たんなら、いいんだけど。
なんだかちょっと危なっかしくもあり、かといって警察に届けるような大事でもない気がして、思案する。
「まあ、急ぐわけでもないし」
少し、こうしてようぜ、と新庄さんが、エアコンを調節する。
女の子は片手に水を持ったまま、運転席にしがみついて、それを眺めはじめた。
「なつかれましたね」
「自慢じゃないが俺は、子供受け悪いんだけどな」
それは、受けようとしていないからだろう。
実際それなりにふるまえば、こういう裏表のないタイプの魅力は、子供にも伝わるはずだ。
「こっち来たら?」
新庄さんを指して女の子に言うと、ぱっと顔を輝かせて身軽にコンソールを乗り越え、驚愕している新庄さんのひざにひょいと乗った。
やっぱり。
「この子のおうち、同じ車種なんじゃないでしょうか」
「確かに、移動し慣れてるな…」
そう言う新庄さんは、たぶん女の子の懐っこさに驚いたんだろう。
行き場をなくした腕を窓の縁にかけて、女の子の頭越しに、困ったように笑って私を見た。
でもけっこう、見た感じは、しっくりきている。