オフィス・ラブ #∞【SS集】
「靴、脱がせてやってくれるか」
「そっか、ちょっとごめんね」
可愛らしくておしゃれなキャメルのサンダルを脱がせて、シートに足を乗せられるようにしてあげる。
女の子は、にこっと私に笑いかけて、新庄さんのひざの上で自分のひざを抱えた。
「おうち、近いの?」
やっぱり、質問には答えてくれない。
新庄さんの胸に頭をもたせて、残り少なくなった水を大事そうに飲みながら、首をかしげる。
手ぶらだし、きっと近所の子なんだろう。
お話ししてくれたら、楽しいのになあ。
「奈保の小さい頃を思い出します」
「このくらいの頃だと、お前は…」
「中学生ですね」
毎朝、自分より大きいんじゃないのっていうランドセルをしょって通学する姿を見ながら、私も途中まで同じ道を中学校へ向かった。
部活から帰ったら、奈保がまだ戻っていないと聞いて、心臓がつぶれそうになりながら探しに駆け回ったこともある。
「子供って、遊んでると時間忘れちゃうんですよねえ」
「お姉ちゃんらしく、叱ったのか」
「いえ、それは母がやってくれたので、私はまあ、バカだねえと言うくらいで」
会話を交わす私たちを、交互に見あげる女の子が、愛らしい。
「お前も、心配かけないうちに、帰んないとダメだぞ」
新庄さんが、脚で女の子を軽く揺すって言うと、はっと何かに気がついたように、彼女が目を丸くした。