オフィス・ラブ #∞【SS集】
「何が、立ち話くらい、だ」
だって、大昔の話だもん…。
そうぼそっとつぶやくと、煙草をくわえた顔が、再びじろっと私を見た。
「その大昔に、どうやらかなり、好き放題やってたらしいな?」
「そんな言いかた、される筋合いありません」
思わず険のある声が出る。
なんだ、自分のこと棚に上げて。
途中で数えるのをやめるくらい、それこそ好き放題やってた人に、何も言われたくない。
「俺を、何人目だと言ってたっけ」
「…二人目、です」
「どう数えたら、そうなるんだ」
何度かトライした後、ライターのオイルが切れていることに気づいた彼は、それを放り出すようにテーブルに置いて。
乱暴な仕草で、テーブルにあった喫茶店のマッチを擦って、煙草に火をつけた。
燐の、懐かしい香りがふっとただよう。
「ちゃんとつきあったのは、ってことです。そう説明したでしょう」
「改めて訊くが、ちゃんとつきあわなかったのは?」
…一度きり、とかも入れたら、まあ…。
小さな声ながらも正直に申告すると、新庄さんが、あきれたようなため息をついた。