オフィス・ラブ #∞【SS集】
私は高校の頃まで、地方の公立の学校で、ごくごく普通に、真面目に勉強と部活にいそしんでいて。

友達と遊ぶのも楽しかったし、ひとりで過ごすのも好きだったしで。

好きな子くらいはいたけれど、特に男の子とのつきあいなんかには、興味がなかった。


大学に入った時、サークルに入る気もなかったので、時間が余るなあと思い、そうだ、そろそろ彼氏というものをつくってみようと思い立った。

けれど、それまでそういう経験がなかったので、どんな人が自分に合うのかわからず。


これは、ちゃんと勉強してから臨まないと、絶対に失敗するぞと感じ、まずはいろいろな人と仲よくなってみよう、と決心したのだった。



『恵利って、そういうとこあるよね』

『どういうとこ?』

『手段を選ばずに、石橋を叩きまくるっていうか』



なんで俺だけにしてくれないの、と言われたので、状況説明をしたら、秀二が、仕方ないなあという顔をして言った。

私は当時、彼の他にも、常時何人かとそういうことをしていて。

けどみんな、最初からお互い割りきっていたので、本気で私を好きだなんて言ってくれるのは、秀二だけだった。


ただの市場調査のつもりだったので、そういう人はかえって申し訳ないから、選ばないようにしていたんだけど。

なぜだか秀二には、ちょっと近づきたいなと思わせる何かが、あったのだ。



『つきあってみなきゃ、わかんないじゃん。結局、つきあってないんだから』



そうか。

言われてみれば、そうだ。



『飛びこんでみなきゃ、わからないこともあるよ、きっと』

『どうしたの今日、お説教モード?』

『だって俺が、あんまりかわいそうなんだもん』



ベッドの上にあおむけになって、ふくれっつらで漫画を読む秀二が、愛しくて抱きつく。

邪魔だよ、なんて文句を言いながら、秀二はいつも、優しかった。

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