オフィス・ラブ #∞【SS集】
そう思いながら横顔を眺めていたら、ふとその顔がこちらを見て、目が合った。

しばらくじっと私を見た後、おもむろに、にやりと笑う。

…何、何、嫌な感じ。


信号が変わり、対向車の途切れ目を狙って、新庄さんが器用に車をUターンさせた。



「たまたまなんだが」

「はあ」



この間、学生時代の知りあいから、久々に連絡があってさ、と急にくつろいだ様子で話しはじめる。



「その時、偶然、消息がわかったんだ」

「…誰のですか」

「よかったら、今度会わせてやるよ」



だから、誰にですか。

なんだか嫌な予感がして、私の声は緊張のため、すっかりこわばっていた。


新庄さんが、そんな私を見て、最高に嫌味な顔で笑う。



「俺の、初めての相手」



やめて、聞きたくない。

会いたいわけない、そんなの、バカバカ。

やめて、やめて、やめて。


頭の中が悲鳴でいっぱいになり、思わず耳をふさぐ。

新庄さんは非道にも、運転しながら、片手で私の手を無理やり外させると、そのまま続けた。



「都内に勤めてるらしくて」

「いいです、もう」

「2年上なんだけどさ」

「いいですって!!」



私の声は、本格的に悲鳴になっていた。


久しぶりに思った。

この男は、やっぱり。



「…鬼!」


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