鬼課長の憂鬱~謎めく可憐な美少女部下~
「詩織。おまえ、バカ正直だな?」


 俺と詩織は定員6名の狭いミーティングルームへ入り、ドアを閉めるやいなや、俺はそう言って詩織を睨んだ。


「打ち合わせじゃないんですか、課長?」

「んなわけないだろ?」

「公私混同ですよ?」

「そんな言葉は俺の辞書にない!」

「もう、おにいちゃんたら……」


 ようやく詩織はいつもの顔になってくれた。ちょっと怒ってるぽいが。


「なんで、ごまかさなかったんだよ?」

「小島君の事?」

「もちろんだ」

「だって、その必要はないと思ったから。どうせいつかは知られちゃうし」

「そうかあ? そうでもないと思うけどな」

「知られちゃうに決まってるでしょ? 歳が同じで名前も同じ。しかも歩行困難なのよ? むしろ今まで気付かなかった事の方が不思議だわ」

「それもそうだな」

「じゃあ、仕事に戻ろうよ」


 そう言って詩織はドアノブに手を掛けたが、咄嗟に俺はその手を掴んだ。


「おにいちゃん……?」

「小島には気を付けろよ」

「どうして?」

「あいつは、女癖が悪いという噂なんだ」

「噂に過ぎないんでしょ? おにいちゃんったら、おおげさ」

「野田も気を付けた方がいいと言ってた」

「恵子さんが? わかった。気を付ける」


 なんだよ、詩織のやつ。俺の言う事は聞かないくせに、野田の名前が出た途端にそれかよ。おもしろくねえなあ。


「でも、やっぱり心配いらないな」

「なんで?」

「だって、おにいちゃんが守ってくれるから。そうでしょ?」

「ああ、もちろんさ」


 一時は拗ねたが、詩織から甘えられた途端に機嫌が良くなる、単純な俺なのだった。

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