奏で桜
…彼は自宅の扉の前にいた。

恐らくアルバイトの帰り
だったんだと思う。

私はそんな彼に今起きた出来事を
包み隠さず説明した。

私は動揺しきっていて、上手く説明が
出来ず、さらに涙すらも流していた。

しかし、彼はそんな私に
〝落ち着いて下さい、大丈夫〟と
和らげるように話す。

彼の言葉に私は助けられ、
泣きながらもどうにか
説明する事ができた。





…彼はこんな時でも
〝平常心〟そのものだった。

バイト先に今日のシフトを
変更してほしいと連絡したり、

私の話を聞き、地図を開いて、
その周辺の場所を再確認したり、

まさに冷静という言葉が
身体に貼り付けられたかのように
クールに対処をしていく。

そんな彼が凄いなと感心する一方で…







…少し怖かった。



そして私たちは彼女を見つける為に
陽がすっかり沈みそうな
夜の街へと向かった。
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