奏で桜
全身の力が抜けていくのを感じられた。

愁眉を開く、というよりは
呆れてものも言えない、に近い。


それが嬉しくないと言えば、嘘になる。
だけど、それ以上に疑問の方が
膨れ上がっていった。



…そう、その答えは先の〝何故〟を全否定し、
それを上回るほどの疑問を生んだんだ。





「…なにそれ…。信じらんない…。
バッカじゃないの…?
なんで…?どうして、そこまで私の為に…
私なんかの為に頑張ることができるの…?
どうして…。」



私がただ、無垢に問いかけると、



「…それが知りたいのなら、
あの中へ入りなさい。」


彼女は人差し指を突き立て、
後ろの扉を指し示した。
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