イケメン御曹司に独占されてます
ギリギリと突き刺すような視線に何も答えられないでいると、さっきから黙ってうなだれていた真ん中の女性が、もう耐えられない、というように泣き出してしまった。
その場を取り巻くただならぬ空気が、緊張をまた高める。


「あの、一体どういう……」


「どうもこうも、彼女は秀明さんの花嫁候補だったのよ。秀明さんたら、それを理由もなくお断りになって……。彼女と秀明さんは中等部の頃からお付き合いしていたのですからねっ。それを一方的に……」


さめざめと泣き崩れている女性はいかにもなお嬢様だけれど、加奈子さんのように洗練されたタイプとは違っている。
おしとやかで従順な、きっと旦那さんのあとを三歩下がって歩くような、古風なタイプだ。


この人が池永さんの元カノ……?


憤慨して言葉を並べ立てる両端の人たちを横目に、うなだれる元カノらしき人物を覗き込む。
私と池永さんは特別な関係じゃない。
誤解を解かなければと思ったけれど、何故だか理由の分からない寂しさが沸き起こる。
不可解な感情を無視して、私は彼女に言った。


「あの、何か誤解されているようですけど、私と池永さんは皆さんが思っていらっしゃる関係ではありません。会社の後輩で、今、池永さんと一緒にお仕事をさせて頂いています」
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