イケメン御曹司に独占されてます


小さな女の子が、クローバー畑の中で無心に何かを探している。
お母さんが作ったオレンジ色のワンピース。髪は高い位置で二つに結って、ワンピースと同じ色のリボンを結んでいる。


誰も足を踏み入れていない、群生したクローバーに埋もれる私の周りには、瑞々しい若草色が優しげに揺れていた。


「萌愛。見つかった?」


「ううん……。中々見つからないの」


もうずいぶん長い間探しているのに、ちっとも見つからない。そんな私を、クローバーの絨毯の上に足を投げ出したターくんが優しげに見つめている。
夏休み中、暇さえあればここへきて探しているというのに、私の探し物はちっとも見つからない。


「そんなに簡単に見つからないんだ。なんたって、願い事を叶えてくれる魔法なんだからね」


がっかりしたように表情を曇らせた私に、ターくんが優しく言った。


「見つけたらターくんにあげるからね!!」


「……僕のことは良いよ。萌愛は、自分のお願いごとをすればいい」


ターくんが困ったように笑って、その切なげな瞳がまた私を不安にさせる。

源兄ちゃんの家にターくんがやってきて、もう一ヶ月以上が経っていた。私は暇さえあればお隣に遊びに行き、男の子同士の遊びを中断されて不機嫌になった源兄ちゃんに追い返されることもしばしばだったけれど、それでも優しいターくんのとりなしでよく一緒に遊んでもらっていた。


一番楽しかったのは、あの工場跡に忍び込んで、よつ葉のクローバを探すことだった。


源兄ちゃんは探検と称して広い工場のあちこちを見て回っていたけれど、ターくんは私のそばで静かに本を読んだり、考え事をしていることが多かった。

今思えば、小さな私をひとりにしておかないように一緒にいてくれたのかも知れない。


よつ葉のクローバーには特別な力がある、と教えてくれたのはターくんだった。
なんでも、特別な夜にそれを見つけられたら、願い事が叶うという。
小さかった私には、それは特別魅力的なものに感じられた。
まるでアニメの主人公たちがとっておきの場面で使う、魔法のように。
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