イケメン御曹司に独占されてます
ようやく渡された伝票を処理し終わると、時刻はすでに午後七時を過ぎていた。
今日は午後から、池永さんはじめ営業の男性たちは全員外出していて、そのまま直帰の予定だ。
派遣できてもらっている事務職の女性も定時で上がっていたから、第三営業部の島にはすでに私ひとりしかいない。

処理した伝票と請求書をセットして決済ファイルに収めると、残っていた雑務を片付けてしまう。

最近は仕事のコツもつかんで、特別な業務が入らない限りそうそう残業することも少なくなった。
デスクの上が綺麗に片付くと、何だか一気に力がぬける。
大体、先週末から色んなことがありすぎた。平凡な人生を歩んできた私にとっては、とっくにオーバーフローだ。





スイートルームに泊まった翌日、なんだかんだと部屋を動こうとしない池永さんに付き合って、結局ホテルを出たのはお昼前になってしまった。

ホテルの駐車場に停めてあったという車に乗せられ、ちょうどお昼だからと景色のいい素敵なレストランでランチをご馳走になった。そしてそのまま何故かドライブし、夕食まで食べさせて貰って私の住むワンルームマンションまで送ってもらったのは夜も遅い時間になってからだった。

その日は終始穏やかな表情を浮かべ、私の話に短い相槌をうち、たまにキラキラした微笑みを向けるという、入社以来見たことも無い姿を見せた池永さん。
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