イケメン御曹司に独占されてます
「髪型が変わってる。そんなリボンしてたっけ? それに……今日はどうしてそんなに綺麗なんだ? お前、もしかして俺のこと誘惑してる?」


誘惑!? そんなつもりは……。


「あの、化粧品売り場の店員さんが……。このリボンは、プレゼント用なんです」


動揺からなんの考えも無い言葉が口をつくと、池永さんが悩ましげな微笑みを浮かべる。


「それじゃ、俺がもらってもいいってこと?」


結果的に大胆なことを言ってしまった自分に、取り繕うこともできずにカーっと血が上る。


次の瞬間、池永さんから微笑みが消えて腕を強く引き寄せられた。

私の体は池永さんの長い腕に包まれて、胸に閉じ込められている。
まるで当たり前みたいに、そこが私の場所みたいに。


「こんなところに、ずっとひとりで突っ立ってたのか。オフィス街だからこの前みたいな奴はいないだろうが、次からはせめて安全な場所で……。こういう場合の対応の仕方を、決めないといけないな」


背中に回された腕にギュッと力が込められて、涙に濡れた頬が池永さんのワイシャツの胸に押しつけられる。
ドキドキするより、池永さんの体温に包み込まれることが今はとても安心で、ワイシャツの胸の辺りをギュッと掴んでしまう。


それに応えるように、抱きしめる腕の力が強くなった。


「これからはもう待たせない。……だから、ごめん。それにありがとう」


待っててくれてありがとう、そう耳元で囁いた唇が首筋に触れて、はっとしてあげた顔を捕まえられる。

今度はただ熱い吐息だけが、何度も唇を彷徨った。



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