イケメン御曹司に独占されてます
「あぁ、あれはダテだから。目は悪くない。目立つだろ、この色。こんなの仕事には不要だから……」


そうだ。池永さんの目はとても目立つ。
覚えてる。
だって、私はこの瞳にはじめての恋をしたから。


「萌愛……」


呆然と立ち尽くす私に、池永さんが手を差し伸べた、その時だった。
廊下の奥の方から、慌てた様子の源兄ちゃんが小走りに近寄ってくる。


「萌愛が来たって!? いや、あのさ、これには深い事情が……」


そしてその奥から、けたたましい鳴き声を発しながら、小型犬がすごい勢いで駆け寄ってくる。

なに、この子。
源兄ちゃんの家に、犬なんていた!?


「こらっ。萌愛は犬が苦手なんだから、誰かあっちへっ……」


止まらない、激しく吠える犬の声。
体が震えるほどの恐怖感が全身を包んだ。と同時に、記憶の破片が脳裏を過ぎる。


月夜のクローバー畑。誘われるままに光る葉陰に、完璧な形をしたよつ葉のクローバー。それを手にした瞬間、犬が襲ってきて……。誰かが私の名前を呼んだ。振り返ると、塀を飛び越えて駆け込んでくるターくんがいて……。


何も考えられないままに、私はその場を駆け出していた。





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