今宵、君の翼で



父も翼のように、スッキリとした表情をしていた。


そして〝やっと罪を償える〟って言ってたっけ。



「そっか…」


「すぐに…出てこれるよね?」


「わかんねぇ…俺のやってきたことは簡単に許されることじゃねぇから…。でも、早めに出られるように頑張るつもり」


「うん…」


翼が他の誰よりも頑張ってるってことを、さっき職員の人が教えてくれた。


お母さんとの約束、守ろうとしてくれてるんだよね…


その時、近くにいた職員から「あと5分」の声が聞こえた。


焦ってしまう。話したいことは山ほどあるのに。


「すぐに出られるか、何年かかるか…どうなるかまだわかんねぇけど、俺の事信じて待っていてほしい。必ず迎えに行くから」


翼の目が真剣で、その言葉に嘘はないと感じた。


「うんっ…私はずっと待ってる。翼の事…信じてるよ」


翼が笑った瞬間、時間になってしまった。


私は待ってる。


例え1年後でも5年後でも。





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