私の小さな願い事

側室不適格

数日後


東宮様 側室としては、不適格


という知らせが届く









やっぱり……





ちゃんとご挨拶すら出来なかったんだもの

当たり前ね…





兄様、ごめんなさい






私は、再び畳と壁を見続ける日々に戻った


退屈


そう思いながら、側室に選ばれなかったことをどこかでホッとしている


あの場で気に入っていただいても

とんでもない山猿だと

追い出されるに違いない




兄には、悪いけど




心底、よかった…




徳川家の恥にならずにすんだのだから






ふと、桜の香りに振り返る






「東宮様!?」

「こんにちは、体調はいかがですか?」

「ええ、もう…すっかり元気です」

「それはよかった!
びっくりしましたよ、急にぐったりおなりになるし、何より軽すぎる!
ちゃんと食べていますか?」

「一応……
あの……運んで下さったそうで……
ありがとうございます」

「依里殿、家茂殿の許可は得た
明日から私の所に来て下さい!
側室としては、まわりが煩くて
だから
私の隠密になってはくれませんか?」


隠密って……何?



どうしよう…



「お嫌ですか?」


「いえ… 東宮様の仰せに従います!!」





これも、兄の為!!!


私に出来ることならば


何でもやらなくちゃ!!!









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