私の小さな願い事
これは、師匠である歳三を裏切ったことになるだろう

自ら長州にいたいと言った

その夜

桂と高杉に打ち明けた


「私… 徳川依里と申します」


すべて打ち明けて、二人が出て行けと言えばそうしよう

もしも斬られるのなら

優里だけは、助けて貰おう


「徳川って……あの?」

「はい 徳川家茂の妹で、慶喜の側室です
私…死に損ないまして、目と耳が不自由になったんです
邪魔になったようで、慶喜に殺されかけ
子供…優里って言います
この子を守りたくて……
二条城を脱走しました
新選組の土方歳三は、私の剣術の師匠で
匿って貰ったのですが、バレました
そこで、桂さんとばったり再会しました」


「そうか…… よく耐えたな」

「もう…我慢するな」

「そうだ!お前は、小桃!
この子は、桜!」

「いつか、どちらかを正式に選ばなければならない
その日まで、気楽にここで働いてくれ」

「ありがとうございます」


深く頭を下げた



「しっかし、姫君なのに、なんで家事が出来るんだ?」

「お寺で育ったの
女中から山猿とか、猿姫とか
言われて…」

「猿も屋根から落ちるか…」

「桂さん!!」

「え?なになに?」

「何でもない!!」

「小桃が屋根から落ちて来たんだ」

うわっ 高杉にバカにされる!!!

「それが出会い?だから、言わなかったのか?ドジなのか?猿のクセに?」

「からかわないで!!!」


「俺は、ついてる!
あの日偶然、あの場所に小桃が落ちて
廃寺に気配を感じて
小桃が今、ここにいる!!
運命のような気がしてな!!」



二人は、私が徳川の人間だと知っても

変わらなかった


利用されるかなって、不安はすぐに消えた


「小桃!!寝ようぜ!!」

「うん!!布団敷くね!!」


三人分の布団を敷く


いつも通り



私を小桃と呼んでくれる




いつか、どちらかを選ばなければいけない


桂の言葉は、いつも痛い


核心をつくから…







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