私の小さな願い事
依里に連れてこられたのは

炊事場


「そこ、座ってて」

テキパキと料理をする

依里の料理…

初めてだな


「一応、側室だったからね
妻として、これが最後の仕事ね」


おじやに味噌汁

そして、懐から出した沢庵


「おいしい」

「そう?よかった!
沢庵も私が漬けたのよ
評判良いから、朝餉にと思ったんだけど
毒入れるとこ見ちゃって」

前と変わらぬ笑顔

この笑顔が見たかった

ずっと……

会いたかった……



「やだっ!!泣くほどおいしい???」



「ああ、こんなうまい飯は、初めてだ」



「そう ありがとう」


食べ終えると片付けをして


「忍び込んだは良いけど…
夜まで待てない」

帰りたがるから、側近を呼び

依里を外に出して貰う



「さよなら」



別れ際に、言われた言葉が痛い



俺からは、別れの言葉を口に出来なかった



もう……



依里に会えない







二度も依里を失った







生涯、そばにおき幸せにすると誓ったのに



















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