私の小さな願い事
文久 三年 夏

浪士組

いよいよ

京の町に出る時が来た



黒ずくめの忍装束に身を包み



優と屋根に上がる



忍頭の指示に従い

夜の京を、誰にも見つからないように

一廻りする



楽しい



ただ、屋根の上を渡り歩くだけで

自由になれた気がした





ボーーーウ




少し離れた場所に炎が上がるのが見えた


「いくぞ!!」


頭の後を追う



火事の現場には、浅葱色の羽織を着たものが、大勢いた


「あれは、壬生浪士組だ
チッ 芹沢か……」


芹沢と呼ばれた人は

ニヤニヤしながら、火を見ている男

あの人ね…


「火消しの手伝いをしますか?」

「いや、帰って報告する」

「「 はい 」」



私達の初めての実践訓練は、ここで中断された





翌日


優と昼間に町を歩く

といっても…


「何で、男装なのでしょうか?」

「さぁ?」


頭からの指示


〝町で芹沢の噂を聞き耳立ててこい〟


つまり、噂話をこっそり聞いているだけでいい


なぜ男装???



優だけでなく、私も不思議でならなかった








その答えがすぐにわかる



「よう?娘!!俺についてこい!!」


なるほど、こういうことに巻き込まれないためか


同じ年頃の娘が、汚らしい浪士に手を引っ張られて、嫌だと泣いていた



「やめなよ」



そう言って、男の手をひねる

力の抜けた手が離れて、娘を優が連れて行く


「小僧……死にてぇのか!!」


刀を抜き、私に向けてきた


「売られた喧嘩は、買いましょう」


私も刀を抜き構えた


浪士から、攻撃をしてきたけど


遅い



刀をひっくり返し、峰打ちをする

一発で倒れてくれてよかった


頭から、目立たぬように言われている




「優、いくぞ」

「おう」


二人して、男らしく会話して

さっさとその場を離れる


笠をかぶり、顔を隠しているが


少々、目立ちすぎた



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