私の小さな願い事
人気のない路地へ二人で入り

後ろを振り返る


浅葱色の羽織を着た男が

たった一人で、私達の後をついてきたのだ


「二対一だけど?」


優がひいてくれとばかりに、言う


「お二人とも、お強そうですね!!!」


ニコニコ笑って、私達に近づく

「よろしければ、浪士組に入りません?」


勧誘されているらしい



「断る」



今度は、私が言った



「僕、沖田総司と申します!!
気が変わったら、いつでも浪士組にどうぞ
お二人のような、お強い方に出会えて
今日は、ついてますねぇ!!」


ニコニコ笑って

ふんふんと鼻歌をしながら


去って行く



沖田総司



多分……私と優の二人がかりでも

苦労するほどの強い男



ニコニコ顔からは、想像出来ない



すごさがひしひしと伝わり



あっさり帰ってくれてよかったと


心から、ホッとした



しつこくなくて、よかった…








芹沢の評判どころか

壬生浪士組の評判は、最悪だ



人斬りだの

疫病神だの

江戸に帰れとか



散々な言われよう



「今日会った、沖田総司は
真っ直ぐな目をしていたわね」

「そうね… 少し怖いと思ったけど
悪い人とは、思えなかったね」




誰にも後をつけられないように




御所に戻って、報告をした






報告を聞いたのだろう


「依里、怪我はない???」


東宮様がすっ飛んできた


「この通りです!!」

両手を広げ、元気だと見せる


「むやみに戦いを挑むな!!
男装していたとはいえ、女子なのだから!
依里に何かあったら……」


!!!!!



東宮様が私を抱きしめる

桜の木の下で、ふんわりと抱きしめた

あの時と違い

何かおびえているようだった



「依里……」



東宮様から、呼び捨てにされていると

気がついた


「ふふっ 心配御無用です
東宮様、私…喧嘩に負けたことないんです」

「だから!!挑むなと言ったばかりだ!!」

「私に喧嘩を売るとは、東宮様に喧嘩を売ったも同じ!!
負ける訳にも、逃げる訳にも
まいりません!!
だから……東宮様、私に貴方を守らせて?」



どんなに仲良くなろうとも

東宮様と私は、主人と隠密


なのに、私を心配して下さる


私のやる気にまた火がつく


東宮様の為に、もっと…強くならなければ



抱き合う私達に、オッホンと咳をして


顔を赤らめている優がいた


どうしたの???


風邪かしら???



「私は、失礼する
依里、戦うな!!よいな!!」

「自分からはね…」


納得してない様子だけど

東宮様は、お戻りになられた



「優、風邪じゃない?」

「これは、依里のせいよ!!」


真っ赤なまま、そっぽ向く


「お薬貰ってこようか?」




心配したけど、どうやら風邪じゃないらしい






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