私の小さな願い事
明治 二年 春
今年も梅の季節がやってきた


まだ、寒い



それでも、この小さな赤い花を見るため
外にいる


歳三の句が浮かび


今年も笑った



元気かなぁ~



世の噂では、旧幕府軍は遠い北の国にいる

ここより寒いなんて、想像しただけで

風邪をひきそう





ぶるぶる




身震いして、中に入る


「桃さん」

「遠藤さん!!!
あっ… ごめんなさい
まだ、産まれてないの!」

「クスッ
桃さんに会いに来たんですよ」

「あら? 私に?」

「もうすぐですか?」  

「そのような大きさになりました」

「はい これ、桃さんへ」


会うたびに何かを貰ったりしているが
今回は、すんなり受け取った


「ありがとうございます!!
これで、安心ですね!!」


遠藤さんがくれたのは、安産のお守り


もし、産まれていたら

どうする気だったのかしら?



「なんです?」



お守りを見て笑っているから、不思議がる


「いえ、嬉しいなって
京に、友達がいるの
夏が終わったら、会いに行こうかな
その時に、こちらのお礼参り、一緒に行きましょう」

「その時は、文を下さい
お迎えに来ます!
子を抱えては、いくら強い桃さんでも
危険ですからね」

「うふふっ 
その時は、よろしくお願いしますね」








安産のお守りを貰った翌日


みごとな安産で、産まれたのは男の子


これまた、みごとに歳三そっくり


「バラガキには、ならないでよ~」



今から言い聞かせとかないと

歳三ったら、有名な悪ガキだったんだから

その当時を知らない私ですら

一緒に剣術の稽古をしているだけで

虐められているのではと、まわりが心配して、何度も声を掛けられた


よっぽどだったんだと、密かに思ったこと



しみじみ思い出す



産婆さんが言うには、少し早くに産まれたようで、しっかりお乳をあげるように
とのこと


「桃さん~」

知らせを聞いて、遠藤さんが来てくれたのは、嬉しいけど

号泣されると、困る…


「あの~ なんで、泣いてるの?」


「桃さんがご無事で!!お子もご無事で!!
うっ 嬉しくてーーーー!!!」

「赤子よりも泣き虫なお父ちゃんだね」

「「え?」」

産婆さんは、誤解した

だけど、なんとなく

否定しなかった



「……すみません!!」

「お父ちゃんがめそめそしない!!」

「はい!!!」



遠藤さんも、否定しなかった









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