私の小さな願い事
お寺の住職としていた紅葉狩りは、山を歩き

色づく紅葉やイチョウなどを見て回るものだった


しかし、今日の紅葉狩りは…




私は、御簾の中


庭にせり出した舞台で綺麗な女性達の

舞踊を眺めている



紅葉は?



って、くらい兄も一ツ橋様もお酒を召し上がっている


こういうのよくわからない


完璧に待遇してしまった



「依里様…あくびは……」


女中として、近くにいる優が睨んでくる


仕方ないじゃない……

つまらないんだもん



今日の警護を新選組がしているとのことで


見つかると気まずい……

というか、歳三達は男だと思い込んでるから、言い出せないでここまできた

まぁ、言ったところで


私みたいな猿が、将軍の妹と信じてもらえないだろう


歳三の弟でいれなくなるのも嫌だし



あーーーーー



早く終わらないかな……





優をチラッと見て、合図をする

「少しですよ!!!」



こっそり、優と座る場所を変え

部屋から抜け出した

久しぶりの着物に
疲れてしまった
警護のない部屋で少し休む為入る


襖を閉めようとすると

なんと、間の悪い…




「おや?貴方、もしかしたら…
家茂殿の妹君では?」



一ツ橋様に見つかってしまった


なんで、ここに!?



言い訳を考えている間に、襖が閉められた


「喋らずの姫…」 


そう言って、一ツ橋様は右手を私の頬へ

何度か親指で頬をスリスリ


何してんの?


クスッと笑って、一ツ橋様の顔が近づいてきた

何?


唇同士が軽く触れて、離れた


一ツ橋様が私をジッと見つめ


もう一度、唇同士が触れた



何?これは、何してんの?


目をパチパチしてしまう


唇が離れた後すぐに


一ツ橋様の左手が、私の腰に回り

グイッと引き寄せられた


近いんですけど???



戸惑う暇もなく、また一ツ橋様は私と
唇を重ねた


今度は、一ツ橋様の舌が私の口内に入り


よくわからないけど


危険を感じた



だから、一ツ橋様の肩を押す
だけど…やめてくれない


一ツ橋様の右手が

着物の上からだけど、胸を触ってきた



なんなの???



とにかく、逃げなきゃ!!!



ごめんなさい……


グイ   コテン



一ツ橋様をひっくり返して


部屋から逃げた


下を向いて走ってたから


ドン


「うわ!!申し訳ありません!!」


また、間の悪い

ぶつかった相手は、歳三

声でわかる……どうしよう…


「どこか、痛みますか?」


下を向いたまま、顔を横に振る


「立てますか?」


優しく私の体を支え立たせてくれたけど

声は、出せないし

顔も上げられない

袖で必死に顔を隠した



「姫様!!こちらにおいででしたか!!」


優!!!よかった!!!


「警護の方ですね?何か?」

「いえ、姫様とぶつかってしまい、お怪我がないかと……」

「大丈夫です!!丈夫なので!!!」


優が自慢気に言った

それは私の台詞だと思う


「こちら、家茂様の妹君です」

「さようで……」


喋らずの姫の噂が歳三にまで伝わっていたおかげで、深く突っ込まれずにすんだ













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