私の小さな願い事
文久 三年 冬

試練

東宮様にどうしてバレたのか


「依里!!其方は、私の妻になるはずだったのだ!!一ツ橋にやすやすと触られるな!」

「はい……ごめんなさい」


兄からも、同じように怒られた


知らなかったとはいえ


自身を守る術を持っているのに


口づけや体を許してしまったんだ







しかし、今日の仕事は、困った


一ツ橋様の警護を新選組とするのだ


男装して、顔を隠した


一ツ橋様は、ご自身で歩き外にある籠に乗るそうだ


外で待機中

「貴方は、悪くないんだから、堂々としてるのよ!!」

優が耳打ちしてくれた


わかってるんだけど…


どんな顔したらいいの?

顔って言っても、目くらいしか出てないけど

気まずい…

とても平常心でいられない





ドキドキしながら、一ツ橋様を迎える


「私に会う為にそのような格好を?」

「は?警護です!!仕事です!!」

「ふっ 先日は、失礼致しました
ただ、突然投げられ、痛かったなぁ~」

「ごめんなさい」

「やはり、喋るんだ……」


しまったぁーーーーーー!!!!!


肩を揺らして笑っている一ツ橋様に
苛立つ


私の顔に手を伸ばしてきた


「触るな!!!」


バシッと手を払う


「威勢が良いですね
そういうところも気に入りましたよ」


にっこり笑って、籠に入った


籠、蹴ってやろうか!!!



ぷんぷんしてたら



「依里… 今は、孝頼なんだから……」


しまったぁーーーーーー!!!!!





やられた……


一ツ橋様は、確かめる為にわざわざ話し掛けてきたんだ



完全に自滅した




「バカね……」


優が冷ややかに言った後、笑って


「その単純さも、好きだけどね」



はぁーーーー





情けない






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