私の小さな願い事
~依里~


御所に戻って東宮様のもとへ

側近の男達から、冷たい目を向けられた

???


「山猿が……なぜ戻ってきた……」


男が低い声で私を威嚇してきた


「……ごめんなさい」


戻って来ては、行けなかったらしい

東宮様に謝罪し、部屋を出る


「依里!!待て!!」


東宮様が呼んでいたけど
胸の奥がぎゅうぎゅうと締めつけられた

これ以上、傷つくのは、嫌だ


頭の所に行き、指示を受ける


新選組が来るまで門を守れ


そう言われた


何も考えなくて済む

一緒に門に向かった男達に捕縛を任せ

峰打ちしていく


新選組が到着した

歳三の隣に優は、いなかった


頭の所に戻り、優を新選組の所にやってくれと頼んだ

そして、軍事総裁職である

一ツ橋様のもとへ行けと指示される


なんで、あいつの?

なんて、言ってる場合じゃない


「藤原です  指示を下さい」

「ここにいてくれないか?」

「今、戦ってないとおかしくなりそうなんだ
どこでもいい……配属してくれ」

「必ず帰って来ると約束してくれるなら…」





少し悩んだ




この身がどうなろうと

どうでもよくて

帰ってこいってのは、生き抜けということ


「わかった 一ツ橋様のもとへ帰って来る」


とにかく、少したりとも

歳三と優のこと

東宮様とか、兄とか

自分のこととか

何も考えたくなくて、外で刀を振っていたかった


配属された会津の者達と、敵を倒す

大砲をどうにかしようと

大砲に向かう

途中…… 歳三と優が口づけしているのを見てしまった

こんな所で、こんな時に


二人と目があってしまい


気まずいし、私は大砲を止めないと…

なんか、呼ばれた気もするけど


どうでもいい…



大砲に向かう私に気付いたらしい

総司が、ついてきた


出会った頃から、総司とは追いかけっこしている気もする

予想以上に敵が多かった為


迷わず斬り捨てた


応援が来た頃には、敵はいなくなった


「依里!!何で、斬っちゃったの!!
駄目じゃないか!!」


総司が私の顔を覗く

会話する気にならず、屋根上に上がり

総司を撒いて、会津のもとへ



一ツ橋様と、あんな約束しなきゃよかった


生き抜く為…

また、人を斬ってしまった



戦いが終わり、一ツ橋様のもとへ戻る


人払いしてから、一ツ橋様が言った

「おかえり」

喜びに満ちた笑顔で、私を見てる

自然と涙が頬を伝う


「依里と呼んでいいか?」


頷くと、また嬉しそうに笑った


私を必要としてくれる

一ツ橋様に救われた


「初めて依里を見た時から、依里に惹かれている
東宮様にきちんと頭を下げる
俺と、夫婦になって欲しい」



返答できないでいると



「俺を好きじゃないことは、わかっている
それでも、そばにいて欲しいのだ…依里」


「私は、人を殺した…
使用人か、護衛でいい…」


「それは、俺が嫌だ!!依里がいいって
言うまで、この前みたいなことしない!
大事にする!!だから……」


一ツ橋様でも
そんな淋しそうな顔するんだ?



「行くとこなくて、困ってたんだ…
利用するみたいで嫌だけど、一ツ橋様が
私を拾ってくれるって言うんだから
後悔しても、一ツ橋様の自己責任です!
それと……
いつ、捨てて貰っても構いません」


「生涯、大事にすると誓う!
依里、其方を幸せにする!!」


あんなに嫌っていた

一ツ橋徳川慶喜の側室になることを

自ら選んだ










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