私の小さな願い事
脱走以外で、一人で廊下を歩くのは

初めてだ


どうにも、気分が落ち込み

散歩に出たくて、優を探している


「駄目ね…あれじゃ」

「本当にガサツで、猿のようね」

「優も大変ね…」

「いえ…出会った頃に比べれば
人らしくなりました」



そんな会話を聞いて、私は部屋に戻った



私を手の掛からない姫君だと言っていた
女中達までも、花嫁修業を始めた途端

あきれ顔になった



このままでは、兄に恥をかかせてしまう

だけど、女らしい所作が身につかない



どうしよう……



畳に伏せた



「まぁ!!はしたない!!
お休みになりたければ、お声をかけて下さいまし!!」



いつの間にか、寝てしまったらしい

優に起こされて

また…失敗したと落ち込む



「お依里様、もうすぐお顔合わせです
本気でやらなくてはなりませんよ!!」



私は、至って真面目だし

本気だ



兄の為、檻を受け入れた




その覚悟に、嘘偽りない

本気だ



ただ… 急に女らしくは出来ないもの

顔を隠そうとして

扇を開こうとすれば、落とし

落としたからって、拾うと怒られる

よちよちと足を引きずり、歩くように言われても

動きづらくて、転けてしまう




兄上…



私…無理かも




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