私の小さな願い事

初顔合わせ

顔合わせの当日




「いいですか?くれぐれも、大人しく!!
慎ましく!!お淑やかに!!」


優は、意気込みが凄い

私は、全く逆


どうしよう…


不安しかない



「クククッ 緊張しておるのか?」


私の顔は、真っ青だろう

自分でもよくわからない身体の震え

そして、冷や汗が出ている


「依里… 少し散歩をしよう」


そんな私を気遣い、兄が散歩に誘ってくれた


しかし……


うまく歩かなくてはと

ぎこちない動きをしてしまう


「クククッ はははっ
依里!!無理なことは、するな!!
まるで初めて歩く赤子のようだぞ!!」


お日様のような兄が笑う



「普通に歩け!」



そう言われても、混乱状態の頭では

普通すらわからない


「見ろ!見事な桜だな!!」


兄に言われて、顔を上げると

満開の桜がとても、綺麗で

コテンッ


尻もちをついた


「ふははははっ!!
下ばかり見ていて、気づかなかっただろ?」


私を立たせ、着物を叩いてくれる

こんなところを優に見られなくてよかった

さぞ、怒られたでしょうね


「こちらが噂の妹君ですか?」


突然、後ろから声がして

顔を隠さなくてはと慌てて扇を出すけど

いつも通り落としてしまう



扇を拾おうとしたら、先ほどの声の主が

拾って下さった


「特技は、木登りだとか?」


私よりも幾分若い男の子が、にっこり

私に扇を差しだして、言った


「私は、木に登ったことがありません
どこら辺まで、登れるのです?」


「この着物ですと、あの枝くらいなら」


「あのような高さまで?凄い!!
登って見せて頂けませんか?」


無邪気にお願いされても……


私は、助けを求めて兄を見る


ニコニコしながら


「落ちて怪我をしないように、登れよ!!」



私の頭の中は、優に怒られるという

迷いがあった

いくら、兄が許しても

優は、怒る






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