私の小さな願い事
いいのかなぁ……


不安でしかたなかったけど


私は、木に登る


あっという間に目的の枝にたどり着くと


枝に座り、下を見る



ニコニコの兄の隣で、キラキラと目を輝かせる男の子

そういえば…

挨拶をしていなかった




クルクル  シュタッ




私は、木から降りた



「私も登りたい!!」


無邪気な彼は、私の手を取り


「御指南下さい!!」


今度こそ困った


兄は、ニコニコしながら


「お怪我されませんように」


面白がっているようだった



「まずここに手を置き、足でこの辺りを踏み台にして……」


初めての割に、難なく登る


「素晴らしい景色です!」


桜に囲まれて、花の隙間から

空を見上げ、とても嬉しそうな彼を見たら

登ってよかったと思えた



桜から降りる時



彼が体勢を崩した



私は、とっさに彼の身体を支えた


同じくらいの背丈


それでも、少しゴツゴツして


男なのだと認識して、慌てた


それなのに、彼は私を兄の目の前で

包みかえしてきた



「とても楽しかったです!!
貴方が私の所に来てくれたら、毎日楽しいでしょうね!!」


この状況を理解しようと

考える


「依里、よかったな!!
やっぱり、気に入ってもらえた!!
東宮様、依里をよろしくお願いします!」


「こちらこそ、よろしくお願いします!」



え?


東宮様?


全身の血の気が引くのを感じた


「すみません!!私…東宮様だとしらなかったとはいえ、木登りとかさせて!!
どうしよう…」

「依里がこんなに喋るのは、珍しいな」

「噂では、喋らずの姫だと聞いておりました
このように楽しい方で、よかった!!」


東宮様は、兄と同じお日様の笑顔を

私に向けてくれたけど……ちっ近い!!

いい加減、離れてほしい

こんなところを誰かに見られたら



完璧に血の気が引き切った私は

目の前がチカチカと光るのを

感じた途端



真っ暗闇の中に落ちた








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