私の小さな願い事

あなたの代わりはいない

寒い日だった


私は、今日…姫として慶喜様の横に並ぶ


「ぷくくっ 普通にしてろ!」

「だぁってぇ~」

「今さら、気取ってどうする?」

「山猿って、思われたくないもん」

「良いではないか!山猿も可愛いぞ!」



あれから、多津からも文がきた

〝猿姫様〟と書いてあった

私の名前知らないのかしら?

内容は、びっしり謝罪の言葉だらけ

こんなに謝られたら、こちらが申し訳ない



あ!新選組!! 東宮様!!



喜びと緊張が一気に高まる

「大人しくするんじゃなかったのか?」

「……そうでした」

ついつい腰を浮かせてしまった


輿から降りた東宮様に二人で、頭を下げる


「依里!!会いたかったぞ!!」

「東宮様!!私も!!」


一年も会わなかったので、東宮様が大きくなっていた

人目もはばからず、私達は抱擁しあった


「ゴホン!!依里は、私の妻です!!」


そうでした……慶喜様は、ヤキモチでした


「気にするな!これは、挨拶だ!
なぁ~ 依里?」

「うん!!」

「いつものことだもんなぁ~」

「うん!!」

「もともと、俺の依里だったんだ!
慶喜が、横槍入れたのだろう!?」

「え?」 東宮様……

「東宮様!!きちんと筋を通したでしょう」

「ふっ 依里!!帰って来たくなったら
いつでもいいからな!!」

「へ?」

どうしたのかしら???

もしかしたら、二人って、仲悪い?


今日は、二条城に東宮様がいらしてくれた

これは、異例なこと

仕事でしか、御所に行かないから

ずっと引き籠もっていたから、文も出せなかった

私が元気になったので、会いに行くと文を出したら、東宮様が来るって

おかげで警護部隊は、新選組に見廻組に会津まで


仰々しいけど…


まぁ 当たり前ね


東宮様なんだもの


そろそろ、二人を止めなくちゃ


「中に入りませんか?」


外であることに、今ごろ気づいたようで

そそくさと中に入る

今日は、優がいない

実は……歳三との間に子が出来たそうで
悪阻が酷く、御所で休んでいる


部屋に戻る途中

私は、嫌な予感がした

それは、東宮様と慶喜様を一度に失う

恐ろしく、はっきりした予感だった

キョロキョロ廻りを見る

歳三が近くにいる

歳三が、頷く



二人を失うくらいなら、私が盾になる



大丈夫! 守って見せる!!




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