私の小さな願い事
~土方歳三~


依里がキョロキョロした

そして、不安気に俺を見た

依里の悪い予感は、当たる

俺が頷くと、依里はキリッと藤原孝頼の顔つきに変わる

上座に座した東宮様、下手に並んで座る

依里達


お茶が運ばれた

「お茶を入れ替えて!」

依里が、運んできた女中に言うと

「……え?淹れ立てですけど…」

「誰がいれたの?」

「……わかりません」

「では、器を違うものに変え、貴方がいれてくださる?」

「構いませんが……」

しばらくして、女中が戻ってきた


「そのお茶に入っているものは、何?」


東宮様と慶喜様は、いつもと違う

厳しい物言いをする依里に

ただ事ではないと、感じているようだ


「……別に、何も」

「そのお茶を入れたのは、貴方よね?」

「はい」

「では、そのお茶を飲み、体に異変があれば
容疑がはっきりするわね」

「……お疑いになって、もし何もなければ
いかがなさるおつもりで?」

「私の剣術の師匠は、薬屋の息子でね
私は、子供時分から鼻が利くの
体に良いか、悪いか、臭いでわかるのよ」

「なんの証拠もなしに、疑うのですか!?」


依里が、湯呑みを持った


「言ったでしょう
飲んで体に異変があれば、はっきりする」

「お待ち下さい!新選組 土方歳三です!
私が代わりにお飲み致します!」

「依里!!土方に頼め!!」

「うむ、土方は、丈夫そうだ!!」


少し鼻をならすが、俺には毒の臭いはしなかった


それでも、依里の予感は、当たる


「貴方は、新選組の副長です!!
副長の代わりを出来る者はいない!!」


「依里の代わりとて、おらぬ!!」

東宮様が言った


「依里、頼むいうことをきけ!!
土方に茶を見てもらえ!!
土方、頼む!!」


慶喜様が言った


そして、依里が


「こんなもので、私は死んだりしないわ
私、丈夫だから…
東宮様の代わりも、慶喜様の代わりも
いない
私の代わりは、いくらでもいるわ!」


自信満々に、言ったが
何の根拠もない


「依里!!俺が……」


言い終える前に、茶を口にした








「依里ーーーー!!!!!」










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