イジワル社長と偽恋契約
私の手首を強く掴み、ぐっと顔を近づける旭さん。






「離しっ……」

「絶対離さない。やっと会えたんだ…離したらまた逃げるだろ」


少し不安そうな顔をする旭さん。

こんな表情するのは反則。






「ごめん…俺が悪かった。でもこれだけは言える。恵さんとは何もないから」

「…」


旭さんから見れば、今の私の顔にはきっと「嘘つき」と描いてあるだろう。





「マジでねえよ。ちゃんと話すから。だから…機嫌直せよ」


私の髪を優しい手つきで触り、首元を少しくすぐったいくらいに撫でる旭さん。

私は拗ねていじけていた子供のようだ。






「妙…」


私にそっと体を近づけると旭さんはおでこに軽く口づけをして、次は頬…そして徐々に下に下りてきて…

最後は唇にキスをした。


甘くて大人の味がする。



拒否していたのに…

今は旭さんを受け入れている。


原因不明の腹痛も今はどこかにいってしまった。

私の恋の病は重症だ。



唇がそっと離れると気がついたら私の目から涙が零れていて、

旭さんはクスッと笑うと指で涙をそっと拭ってくれる。






「やばいな」

「何がですか?」

「…このままベット直行してもいい?」

「は!?」


急変する旭さんにほわほわとした少女な気分は一転する。

私はすぐに彼から離れて「ダメです!!!」と叫んだ。


旭さんは静かに舌打ちをした。









「お前の家来るの初めてだな」

「…そうですね」


旭さんを家に招きお茶を出すと、部屋をキョロキョロと見渡す彼にまだ不信感のある私は疑いの目で見つめる。





「ったく…信用してねえな」

「当たり前ですよ!」


ソファーにいる旭さんから離れ、フローリングの床に正座して座る私。






「はぁ…恵さんはな…正確にいえば元婚約者なんだよ」


私の態度を見て、旭さんはお茶をすすりながら真面目なトーンで話し始めた。





「元?」

「ああ。実は俺、親父が亡くなる前まで松葉ホームの副社長やってたんだ。その時に婚約してたってだけ」


松葉ホームって…うちと肩を並べる大手ハウスメーカーでうちと兄弟会社じゃない。


宏伸社長が生きていらっしゃった頃から、今でもうちともいい御付き合いをさせて頂いてるし…

そこの副社長だったの?
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