イジワル社長と偽恋契約
頭を下げて泣く私に、隣にいる旭さんが背中を優しく撫でてくれた。

その行為に余計に涙が出る。







「顔を上げて下さい」


恵さんの声がして言われた通り顔を上げると、彼女はふわっとした表情で笑っていた。





「三井さん…話してくれてありがとう。そして私に協力してくれたり相談に乗ってくれて嬉しかったわ。ありがとう…」


スッと鼻を啜った後、恵さんは旭さんを真っ直ぐ見つめた。






「短い期間でしたがあなたの婚約者になれて…あなたを好きになれて幸せでした」

「…本当に申し訳なかった。以前も話した通りきちんとお詫びしたいので、後日どうか…」

「いえ。お金なんか受け取れませんしいらないわ。あなた達に幸せになってくれればいいのよ。それだけでいいの…」



恵さんがまるで女神みたいに見えた。

こんなにいい人がこの世にいるのだろうか…


私なんかよりずっといい女性…

旭さんにはぴったりの女性なのに…







「それに…三井さんが相手なら快く身を引ける。だってあなた……私にすごく良くしてくれたしね。私友達のことは裏切れないもの」

「恵さん…」


また目から涙がこぼれた。

それなりにメイクして来たつもりだったのに、目の周りはボロボロ。


でもモヤモヤした気持ちは晴れた…









ブオォォーーーーン……


帰りの車内は以外にも静かで、旭さんは無言で運転をして私は助手席で窓から見える東京の気色を眺めていた。




恵さんに悪いことしちゃった…

あれから何事もなかったように振舞ってくれたし、私達のこと祝福してくれて応援してくれた。
< 89 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop