妖しの姫と天才剣士



「いって! 何すんだ! 総司」

「もう終わった? 左之さん」

「ああ。……これ以上続けれる奴がいないしな。不完全燃焼だぜ」


上半身裸のまま、彼は頬をボリボリと掻く。


その顔はとても不服そう。


確かに燃え切ってない感があるな。


でも、周りの人はすでに疲れ切ってるみたいだ。


流石にそんな彼らを駆り立ててまでする気はないようだ。



「ってか、何で副長が居んだよ。しかも近藤さん……と、誰だ? そいつは」

「新しい入隊希望者だよ〜。今から試験」



左之さんの射抜くような目。


それには明らかに私の事を探っているのが分かる。


ピクリと肩が震えるのがわかった。



「おい、左之助。こいつの相手をしてやれ」



投げやりに土方さんに言われた。


げ。この人と?


「良いのか? 土方さんよ」



明らかに楽しそうに口元を歪ませる彼。



「ああ、どうせお前も体を動かしたかったとこだろ?」



どっちもニタリと笑わないでほしい。



「まぁな」


左之さんは転がっていた竹刀を私に投げた。


それを難なく取ると、目の前にまで出る。


以外と軽いな。無駄に振り回しそうだ。


休憩をしていた周りの人が騒めき出すのが分かった。



「はいはーい。審判は僕がするよ」



沖田さんの合図で試験は始まる。


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