妖しの姫と天才剣士
「総司、茅野。終わったら俺の部屋にすぐ来い」
私が道場の隅で休憩している時に副長が顔を覗かせてそう言った。
総司は新しい相手と練習中。
なるほど。作戦会議、かな。
そんな感じのことをするって土方さん言ってた気がする。
じゃ、それまで真面目に鍛錬にでも取り組みますかな。
近くに置いていた水を飲み干すと近くに総司が立っていた。
今さっきまで立ち合っていた隊士とはもう終わってしまったのかな?
お早い。
「茅野、やらないか?」
こういった訓練の時は茅野呼び。
ちゃん付けじゃ無いんだよね。
まだ女だってバレてないと良いけど厳しそう。
流石に隊士なのに一緒に寝泊まりしてないし、幹部と親すぎるし。
どこかで怪しまれていてもおかしくはないな〜って。
それでも、総司の優しさには感謝。
「ああ、はいっ。……よろしくお願いします。組長」
何だろう。総司の事を組長なんて普通呼ばないのに。
竹刀を持って構える。
「行くよ?」
「はい」
スパーンと、竹のぶつかり合う音が道場に響いた。