妖しの姫と天才剣士



『キヒッ。どう? 結界の中で何も出来ずに大切な人が殺されるのを見るのは』



由羅……?


どこ、どこに居るの?



『僕は今、君の心の中に語りかけてる。

そんな事出来る訳ないって思ってるでしょ?』



……呪符の影響……か。


それとも、由羅の能力? そんなの信じたくないけど。


『助けたければ早くその力を解放してよ。

そうすれば彼らを助けてあげれるのに』



私の……力。


そんな事言われても分からない。


私に力があるなんて聞いた事すらないから。


自分でも知らない力を使えなんて、


無理に決まってる。



「手助け、してあげよっか?」



耳元から聞こえてきた声に振り返る。


いつの間に⁉︎


そこにはニッコリと笑みを浮かべた由羅の姿が。


どうやって入ったの⁉︎


その手にはしっかり小刀が握られていて。



「一回三途の川まで行っておいで。大丈夫、体自身は戻ってくるよ

茅野ちゃん?」



『茅野ちゃん』その声は総司の声にそっくりで。


驚きが先立って次の行動が予測できなかった。



「か、はっ」



鈍い痛みと共に。


胸から小刀が突き出る。


血と共に意識が零れ落ちていく。




視界を横切る白と黒の影を最後に私は完全に意識を閉ざした。


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