妖しの姫と天才剣士

隠し事《総司side》




もう……十一月か……。遅いようで早いなぁ。


九月に来た雷狼たちもちょくちょく顔を出すし、炎蛇とかも顔を見せだしてやけに賑やかになった。


そう思って笑みを零した直後、口の中にせり上がってくる物があって咳き込む。



「ゴホ、ゴホゴホッ」



慌てて口元を押さえるとべちゃりと生温かい感触。


開いた手のひらにはべったりと血が付いていた。それを僕は懐紙で拭き取ってしまいこむ。


慣れたもんだねぇ。



「あ〜あ」



また、だよ。


前までは咳き込むくらいで喀血はしなかったけど。



「……もしかして、あの呪符の影響だったりする?」



由羅が言った、さゆを壊す。それに僕が利用されちゃってる?


『体』が壊されるのは自覚してるし。


だったら、厄介だな。さゆ、そんな事知ったら責任感じちゃうし。


自分のせいでもないのに、一人で背負いこんでしまう。



「総司? どうかしたの?」

「ああ……さゆ。何でもないよ」



建物の影から姿を現したさゆに笑顔を向ける。……やっぱり可愛いなぁ。


何で彼女を男と間違えたんだろ。


手招きして近づいてきたさゆをそっと抱きしめる。



「…………ええ⁉︎」

「どうしたの? そんな真っ赤になっちゃって」



パク、パクと口を開け閉めするさゆは真っ赤に顔が染まってる。


白い肌だから余計に赤く染まった頬がわかりやすい。



「な……っ、何で急に⁉︎」

「こうしたくなっちゃったから」



いつまで、こうしていられるか。


…………なんて言えないよね。


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