妖しの姫と天才剣士
この事は。
僕の事は僕でケリをつける。さゆに余計な心配かけたくないし。
由羅の野郎のいいなりになるっていうのも気に食わない。
なんかむしゃくしゃしてきて無意識にさゆを抱きしめる腕に力が入る。
「…………総司?」
抱き締めたさゆの体は温かくて、良い香りがして。
一緒に居たいってつくづく思う。この血濡れた僕の手を握ってくれるのはさゆしか居ない。
あ〜あ。
もう僕はさゆに依存してる。居ないと生きていけないような気にすらなってくる。
「さゆ」
「ん?」
「僕の事…………忘れないでね」
そう耳元で囁いた。
もし、死ぬつもりなんて全くもってないけれど、それでももしこの呪で死んだ時。
幸せにはなって欲しいけど、僕の事は忘れないで欲しい。そう、思うんだ。
傲慢だね。そんな資格があるとは思えない。
だって、この場に招いてしまったのは僕だ。彼女の将来を歪めたのは僕。
知りたくもないことに関わらせてしまったんだ。
それに、僕のことを忘れないということは、僕が死んだことを忘れないってこと。
そんな辛いことを覚えていてほしくないとも思うんだ。
時々、考えてしまう。
途中で倒れたさゆをそのままにしておいたらって。
それをしなかったのは……多分、いやきっとその時点で僕はさゆに惚れてた。
理由なんて分からないけど、きっとね。
「総司、暑苦しい……」
少し困ったような顔をしたさゆ。
「暑苦しいなんて酷いなぁ。恋人同士の触れ合い、でしょ」
わざと色っぽく耳元で囁いて見せるとまた顔が真っ赤になってる。