フルブラは恋で割って召し上がれ
 
「その他に何か秘訣は?」
「え? えっとそうですね。あとは、飲む人のことを考えて、愛情込めて……」

 言ってしまってはたと気がついた。私が今作ったのって、斎藤氏のためのものだよね? 愛情って言っちゃった? 私。愛情込めてって言っちゃった?

「なるほど、これには君の愛が込められているわけだ」

 フルブラの入った瓶を右手に掲げ持って、斎藤氏がニッと笑った。

 やばい! やばいです! これは面接のときの『外面』に変わる新しいネタになってしまうかもっ。

「え、えっと、良かったら飲んでみませんか? キウィが丁度飲み頃なんです。あ、もしかして、車ですか?」
「い、いや。今日は電車で来たんだが……」
「じゃあ、飲んでってください。ソーダで割ると美味しいんですよ」

『愛情』に突っ込ませまいと、私は怒涛の勢いで斎藤氏を部屋の真ん中に置いてあるテーブルへと押しやり、無理矢理なくらいに座らせると、立つ間も与えずキウイ入りフルブラのソーダ割りを作って「どうぞ!」と斎藤氏の前に置いた。

 斎藤氏は立ち上がる素振りもなく、座ったままで目の前のグラスをじっと見つめている。

「どうしました? キウイ、嫌いでした?」
「いや……そうじゃなくて……」

 斎藤氏は、らしくない言葉の濁し方をしたあとで、グラスを持つとフルブラをぐぃっと喉に流し込んだ。

「……どうですか? お好みにあいませんでした?」
 無言になってしまった斎藤氏。心配になって私が覗き込むようにしてそう言うと……

「寝る」
 と、きっぱりと一言そう言ってふらふらと立ち上がった斎藤氏。
「え? 寝る? え?」



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