おいてけぼりティーンネイジャー
立ち上がろうとしたけれど、力が入らない。
不思議と痛くはなかった。
結局、担架で医務室に運ばれた。
すぐに救急車が到着し、そのまま病院へ。
さすがにまずいぞ、と心のどこかで焦り始めた。
一通りの検査の後、医師から告げられたのは、アキレス腱断絶。
……俺は全日中に出るのを待たず、陸上部を引退することになってしまった。
とりあえず、顧問の車で自宅に送ってもらった。
顧問はひたすら無言だった。
そりゃそうだろう。
俺だって、もし他の部員がこんなことになったら、かける言葉に困る。
正直、俺も途方に暮れていた。
……陸上で生きて行くつもりはなかったし、自分がそこまでの器だとも思っていない。
でも、行けるところまで行くつもりだった。
この調子でタイムが上がるなら……と、夢を見たこともあった。
全てが水泡に帰した。
アリサ、どうしたかな。
びっくりしただろうな。
いや、それより、身体、つらそうだったけど……大丈夫だろうか。
そっか。
もうアリサにも逢えないのか。
どうしてカッコつけてないで、さっさと連絡先を聞いておかなかったんだろう。
……いや。
そういう運命なのか。
その夜は、ぼんやりと過ごした。
家族はみな腫れ物に触るように俺を扱った。
居心地も空気も悪く感じて、たまらなかった。
翌日、最寄の総合病院で再び診察を受けた。
入院して縫合手術を受けることになったが、もうどうでもいい気分だった。
2日後の朝、病院に入院した。
味が薄くてよくわからない昼食の後、手術の準備が始められた。
手術中は局所麻酔で行われた。
麻酔をする時に痛かったぐらいで、後は何も感じなかった。
ぐいぐい引っ張られるような違和感はあったけれど、アキレス腱の縫合も、皮膚の縫合の時も、全く痛みはなかった。
ギプスを装着されて終了。
車椅子で病室へと帰った。
心配そうな顔の母に
「大丈夫。」
とだけ言ったが、何が大丈夫なのか自分でもよくわからなかった。
夜に麻酔が切れて痛むかも、と言われていたのだが、特に痛みを感じることはなかった。
足を上げて眠ったことはなかったけれど、思ってたよりも熟睡できたようだ。
翌朝、普通に朝食が出た。
完食して、化膿止めと痛み止めの薬を服用。
やることもないので、プラトンを読みながらゴロゴロしていた。
……イデアの世界。
せっかく見えたのにな。
理想の世界から締め出されてしまった……か。
気づけば、ため息と自嘲の笑いしか出ない。
薬で身体の痛みは簡単に消えても、心の痛みは……しつこく疼きそうだ。
不思議と痛くはなかった。
結局、担架で医務室に運ばれた。
すぐに救急車が到着し、そのまま病院へ。
さすがにまずいぞ、と心のどこかで焦り始めた。
一通りの検査の後、医師から告げられたのは、アキレス腱断絶。
……俺は全日中に出るのを待たず、陸上部を引退することになってしまった。
とりあえず、顧問の車で自宅に送ってもらった。
顧問はひたすら無言だった。
そりゃそうだろう。
俺だって、もし他の部員がこんなことになったら、かける言葉に困る。
正直、俺も途方に暮れていた。
……陸上で生きて行くつもりはなかったし、自分がそこまでの器だとも思っていない。
でも、行けるところまで行くつもりだった。
この調子でタイムが上がるなら……と、夢を見たこともあった。
全てが水泡に帰した。
アリサ、どうしたかな。
びっくりしただろうな。
いや、それより、身体、つらそうだったけど……大丈夫だろうか。
そっか。
もうアリサにも逢えないのか。
どうしてカッコつけてないで、さっさと連絡先を聞いておかなかったんだろう。
……いや。
そういう運命なのか。
その夜は、ぼんやりと過ごした。
家族はみな腫れ物に触るように俺を扱った。
居心地も空気も悪く感じて、たまらなかった。
翌日、最寄の総合病院で再び診察を受けた。
入院して縫合手術を受けることになったが、もうどうでもいい気分だった。
2日後の朝、病院に入院した。
味が薄くてよくわからない昼食の後、手術の準備が始められた。
手術中は局所麻酔で行われた。
麻酔をする時に痛かったぐらいで、後は何も感じなかった。
ぐいぐい引っ張られるような違和感はあったけれど、アキレス腱の縫合も、皮膚の縫合の時も、全く痛みはなかった。
ギプスを装着されて終了。
車椅子で病室へと帰った。
心配そうな顔の母に
「大丈夫。」
とだけ言ったが、何が大丈夫なのか自分でもよくわからなかった。
夜に麻酔が切れて痛むかも、と言われていたのだが、特に痛みを感じることはなかった。
足を上げて眠ったことはなかったけれど、思ってたよりも熟睡できたようだ。
翌朝、普通に朝食が出た。
完食して、化膿止めと痛み止めの薬を服用。
やることもないので、プラトンを読みながらゴロゴロしていた。
……イデアの世界。
せっかく見えたのにな。
理想の世界から締め出されてしまった……か。
気づけば、ため息と自嘲の笑いしか出ない。
薬で身体の痛みは簡単に消えても、心の痛みは……しつこく疼きそうだ。