おいてけぼりティーンネイジャー
思わず私はしゃがみこんで、自分の存在が恋人達の邪魔をしないようにと隠れた。

ひやー、さすが高校生ともなると、すごいなー。
図書室でイチャイチャするんだー。

ドキドキしながら座り込んでいると、書架の隙間から2人が見えた。
好奇心でそーっと覗く。

男のヒトが書架に軽くもたれるように、やや足を広げて立っていて、ピッタリとくっつくように彼の首に両腕を回してしなだれかかってる女のヒトの腰に手を回していた。
2人の親密度の高さに、さらに胸が高まる。

と、とても見てられない。
私は音を立てないように背中を向けて、そーっとその場から立ち去ろうとした。

「次、体育やろ?早よ行きや。」
「うん。ありがと。またね。」
パタパタと音を立てて、女のヒトのほうが先に図書室を出ていった。
……いかにもオシャレな美人さんだった。
は~。

女子力の高そうな女のヒトの背中に見とれてると、
「なんや、知織ちゃんか。ごめんな、気ぃ遣って隠れたんやなあ。立てるか?」
と、いつの間にか書架を回ってこっちに来た男のヒトが、私に手を差し伸べてニコニコ立っていた。

「あ……竹原先輩?」
入学式の前に職員室で会ったイケメンだ。

……え?じゃ、今そこでイチャイチャしてたの、このヒト!?
ひや~~~っ!
悪びれずにしれっとしてる竹原先輩を、私はただ見つめていた。


「へえ?プラトン?しかも索引って、玄人(くろうと)やん。よっぽど好きやねんなあ。お姫さま?お手をどうぞ。」
竹原先輩はそう言いながら、差し出してる手を少し上下に動かして、私を促した。

吸い寄せられるように手を伸ばすと、竹原先輩はしっかりホールドして力強く立たせてくれた。
いつの間にか、腰にも片手が添えられていた。

か、かっこいい!
でも、恥ずかしい!

「ありがとうございます。」
「プラトンって~、論語と一緒で、弟子が師匠の言葉や対話を記録した形式やん?相手や時系列で言葉に矛盾が生じるから、俺、苦手。知織ちゃんは、平気?」

すぐ立ち去るつもりが、竹原先輩は会話を続ける気だ……腰に手が回ったまんまなんですけど!
「まだ全部読んだわけじゃないんで、矛盾に気づくレベルじゃないんですけど……でも、人間、一緒にいるヒト次第で成長も堕落もするやろうから、むしろ矛盾があるほうが自然な気がします。」

たかだか中学生、それも少し前まで小学生だった子供の言葉なのに、竹原先輩はジッと私を見つめて耳を傾けてくれた。

てか、子供相手にお姫さま扱いしてくれるのもすごいことかもしれない。

この人、何者だろう。
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