八つ子の魂百まで
ご主人様と呼ばないで

「やっと辿り着いた」

いったい出口が何個あれば気がすむんだ!
出口にAやらBやらアルファベットがあるのは聞いていたけど、数字が2桁あるとは聞いてなかった。
出口なんて東口と西口があれば十分だよ。
なんとか指定されていた出口を見つけてからが長かった、案内通りに歩いているけどたどり着かない出口。
もしかして間違えてしまったのか、それとも異世界に迷い込んでしまったのかと不安になること数回。
やっと出口を見つけたのは良かったけど、エレベーターを見つけきれず、重いスーツケースを一段一段引っ張り上げてやっと地下迷宮から脱出。
その後現れた東西南北わからなくなるビル群……
出口付近にあった地図は複雑怪奇で何が何だかわからず、人に聞きながらやっと指定の場所にたどり着く。

「初給料でスマホを買う、絶対買う」

噂の地図機能さえあれば、もっと楽についたはず。
いやそれよりも、地図もいらない田舎に戻りたい!
あぁ神様、これからはちゃんと神棚に手をあわせるので、勤務地は田舎にしてください。

私が辿り着いたのは、たいていの人は名前を知っているであろう有名ホテル。
都内に住んでいる人たちは直接本社に新人研修しに来るけど、田舎からくる私のようなものはホテルに泊まり込みする仕組み。
さすが大企業様だ……

なんども見てすでにちょっとくたっとなってしまった「新入社員研修の案内」を再度確認する。

「時間OK 場所OK あとはロビーで名前とこの案内を見せればいいのよね」

ホテルに入ろうとすると入り口に立っていた制服のお兄さんが笑顔で近づいてきた。
も、もしやこれが噂のナンパというやつでしょうか。いやそれはないか。

「お荷物お預かりしますよ」
「え、あ、だ、大丈げふ」

緊張のあまり舌を噛んでしまいました。
恥ずかしくってお兄さんがどんな表情をしているか見れない。
お兄さんは何も言わず、どうぞと入り口のドアを開けてくれました。
あの田舎から出たことないんだもん、ホテルになんて泊まったことないんだもん。
自分の中で言い訳をしながらロビーに向かいフロントデスクで「新入社員研修の案内」を見せると、受付にいたお姉さんが驚いたような顔をした。
もしかして私、ホテルを間違えた?
でも住所も調べて、ちゃんと地図を印刷してきたつもりだったんだけど……

「少々お待ち下さい」

お姉さんが去ってすぐに、もう一人のお姉さんが現れた。
落ち着いた雰囲気と、慣れた化粧がベテランの雰囲気を出している。

「手続きをしますのでどうぞおかけになってお待ち下さい」

いつの間にか私の横に立っていた先ほどのお姉さんが「こちらです」と私を案内し、そしていつの間にか現れたお兄さんが私の荷物を連行していった。
気がつけば、今まで座ったこともないようなフカフカのソファーに腰をかけて、渡された紅茶を口にしてた。
疲れた体に染み渡るあったかい紅茶、ん〜この香りは……紅茶だ。(茶葉の違いなんて分かるわけない)
さすが有名ホテル、ものすごいおもてなし力。
それとも、これから就職する会社がすごいのかな。
お茶請けにと添えられた小さなバラの形のお菓子を口に入れる。
幸せ、甘いもの最高。
サクサクとした食感と甘い香りが口に広がる、これはクッキーなのか?

「お待たせしました、お部屋にご案内させていただきます」

先ほどのベテランのお姉さんに連れられてエレベーターに乗り込む。
程よい高さのヒール、制服に添えられた品の良いスカーフ。

「15階以上のお部屋は、一度こちらにカードキーを入れていただくと押せるようになります」
「へ?」

お姉さん観察が忙しくついうっかりお姉さんの説明を聞き逃してしまい間抜けな返事をしてしまう。

「15階以上のお部屋は、一度こちらにカードキーを入れていただくと押せるようになります。お客様のお部屋は、客室最上階の20階となっております」
「は、はい」

とりあえず返事をしてから違和感に気がつく。
新人研修用の宿泊場所が最上階?
おかしくない??

最上階に会議室があってそこでみんな雑魚寝するのかな。
何かがおかしいと思うけおど、東京どころかホテルは初めての私……
とにかく、部屋についてから聞いてみよう、ホテルの人が勘違いしてないか。
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