強引な次期社長に独り占めされてます!
驚いて振り返る私と、無言で首を傾げている怪人さん。

「え……と」

「ずいぶん、可愛い格好だな? これからアイツとデート?」

可愛い格好は芽依の見立てだからともかく、アイツとデートの“アイツ”に心当たりはないです!

「の、飲み物を取りに行くだけです!」

どこの誰とデートに行くとお思いか!

ちょっぴり憤慨すると、怪人さんの口元がシニカルに笑う。

「ソフトドリンク? カクテル?」

カクテルはやだなぁ。

「今日のオレンジジュースのカクテルは……甘くなかったんです」

「あー……けっこう甘い方が好きなんだな。ところで、今日は魔女?」

「白バラちゃんと赤バラちゃんです」

怪人さんは私をまじまじと見下ろして、それから組んでいた腕をほどいた。

「悪い。わからない」

そうですよね。有名と言えば有名な童話だけど、知らない人は知らないし。

仲の良い姉妹が、髭が絡まって動けないでいる小人を助けるために、小人の長い髭を切り続けたら、実は小人に魔法をかけられ、熊に変身させられていた王子様を助ける事に繋がった……という童話。

「俺がわからなくてもいいか。飲み物を取ってくるから、ここにいろ」

とても当たり前に命令される。

バサリと揺れるマントと、精巧な仮面……その後ろ姿を眺めて、また壁に寄りかかった。

……彼は死神さんで合っている?
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