強引な次期社長に独り占めされてます!
しばらくして戻ってきた怪人さんを黙って凝視すると、彼も無言でグラスを差し出してくる。

また沈黙が落ちたけど、先に溜め息をついたのは彼だった。

「……お前は、直感に従うと言うことはないのか?」

直感に? そんなあやふやな事を言われても……。

「えーと。死神さん?」

「正解。今日は怪人のつもりな?」

唇が微笑んだと思ったら、さらりと指先で頬に触れられる。

「今日もバッチリ化粧してんなー。お前、化粧すると顔を隠さないなら、普段からバッチリしてろよ」

「え……あのぅ……」

普段からって……さ。
本当に普段から私を見知っている人のセリフだよね?

「死神さん?」

「だから、今日は怪人だって」

「そうじゃなくて。普段の“私を”知っているの?」

マントを捕まえたら、無言で見下ろされた。
彼の躊躇する雰囲気が伝わってきて、そしてまた溜め息をつかれる。

「あー……今日は、魔法うんぬんはいいわけ?」

「今日もバッチリ魔法かかってますよ! 自分で見ても、私は私じゃないみたいですもん」

「いやー……今日のは案外わかりやすいだろ。お前の素顔知ってる奴なら」

そうなの? でも、素顔を知っている人なんて滅多にいないよ?

「あの……あの……」

「……少し位はわかっているんだろう。松浦」

そう言いながら、仮面に手をかけた怪人さんに慌てる。

「待って……!」

一瞬遅く、ひょいっと呆気なく外された仮面に呆然とした。
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