強引な次期社長に独り占めされてます!
「少しは俺にも慣れてきたか?」

「え……?」

「前髪、上げたままでも平気なんだな」

言われて、パッと前髪に手を当てる。
休日だから油断して、クリップで留めていた事をすっかり忘れていた!

しかも私、素っぴんじゃんか!

「平気じゃないです!」

「いや。会社で見てたら、お前は強迫観念でもあるみたいに前髪いじってるから、気にならなくなったんだろ?」

あまりジロジロと見ないでほしい……。

羞恥心がじわじわと身体を熱くして顔まで上がってくると、主任の視線が興味深そうに切り替わる。

「ふーん? 素っぴんだと真っ赤になるんだな、お前は」

「赤くなってません!」

「ところで、手を洗いたいんだけど、洗面所どこ?」

……鼻血は止まったのかな。

「あちらで……」

言いかけて顔をしかめた。

ワンルームにベランダがない代わりに、うちにはささやかな洗面所と洗濯置き場がある。

そこを通るとお風呂場兼乾燥室で、朝シャワーを浴びた後、洗濯物を干していた。

あんなモノを、主任の目にさらせない。

「ちょっと待っていて下さい!」

慌てて洗面所に飛び込んで、洗濯機の上に干していた洗濯物をお風呂場のワイヤーロープに移してから、扉を閉めた。

「どうぞ。石鹸は置いてあるものを、タオルは置いてありますから」

「どうも」

クスクス笑いながら洗面所に向かった主任を見送りキッチンに戻ると、床に落ちた包丁とグツグツに沸いた鍋とケトルに出迎えられる。

主任を相手にすると、なんだかいつもと調子が狂う。
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