強引な次期社長に独り占めされてます!
「お前は綺麗だとか可愛いって言うより、たぶん平凡な容姿の部類なんだろうけど、いくらでも女は化けるだろ」

「お化粧頑張ればですか?」

でも、あまりお化粧は得意じゃない。

身だしなみとしてある程度はするけれど、芽依みたいに器用じゃないから綺麗にアイラインとか引けないし……どんどん太くなっていっちゃって。

頑張った時代はあるけど、結果としては、何だか酔っぱらったパンダたいになったりした。

「ちげぇよ、馬鹿」

主任が冷たい視線で目を細めるから、視線を手元の湯飲みに落とす。

「馬鹿は傷つきますよ……」

「じゃあ、考えが浅い」

言い直せばいいわけじゃないです。

「表情だろ表情。いつも猫背で俯いてばかりで、人を見る時には上目使いで窺ってばかりの奴に、誰が“可愛い”って言うんだよ。男なら遠慮なく蹴飛ばすぞ、俺は」

男でも蹴飛ばされたくないと思いますが……。

「お前は一番最初に、俺が何て言ったのか忘れたのか?」

「えー……と。知り合いいないのか?」

「記憶力に乏しいのか、余程、印象には残らなかったのか……」

暗に馬鹿って言ってますね?

仕方がないじゃないか! めちゃくちゃ強烈に印象に残った言葉があるにはあるけど、それを私の口から言えって言うの?

まさか“私の眼が綺麗だと、主任はおっしゃられました”とか言えとでも?

逆に言ったら“私、眼が綺麗って言われたんです”って、どんだけ自意識過剰な人になるの?
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